作成背景
国の政策として、「地域包括ケア」が推し進められており、健康・長寿を実現させるためには、多職種間の連携が必須となります。健康・長寿を支えるために特に重要となるのが「食事」です。それを支える職種には、管理栄養士、栄養士、調理師など食物の栄養面や調理面を支える主軸の職種に加え、食べる動作である摂食・嚥下のケアを行う言語聴覚士や介助支援を行う介護福祉士など多岐に渡る職種が食事環境を支えています。
山形県の場合、高齢者人口は、他県と比較して非常に多く、病院‐病院間、病院‐福祉施設間、福祉施設‐福祉施設間、病院‐在宅間、福祉施設‐在宅間のように、さまざまな施設間を行き来する例が数多くあります。このとき、移動する人がどのような食べ物を食べていたのか?あるいはどのような食べ物であれば食べることができるのか?などの食べ物に関する諸情報を必要とします。しかしながら、スムーズな情報収集や多職種間の情報の共有化ができていないのが現状です。
山形県における食情報に関する問題点
- 施設毎に用いている食形態の名称が異なる(例:常食、普通食、普通菜等)。
- 各々の施設で提供されている食事形態(硬さ、切り方、大きさ等)が異なる。
- 初回入院・入所時に個人の食情報収集に多くの時間を割いている。
- 共通様式の食情報提供書が存在しない。
- 栄養士間だけでなく、食に関わる多職種間の食情報の共有化ができていない。
作成趣旨
上記の問題点を改善するために、栄養士間だけでなく、多職種間での食情報を共有することができ、かつ誰でも簡単に記入できる共通様式の食情報提供書を作成することとしました。そこで、管理栄養士、看護師、言語聴覚士、介護福祉士等の有識者を委員として召集し、作成趣旨に沿った「食べものカルテ」を作成しました。
食べものカルテの概要
「食べものカルテ」は、食べ物の情報に特化した食情報提供書であり、専門的な知識を必要とせずに誰でも簡単に記入できる様式としました。したがいまして、栄養士はもちろんのこと、他の職種あるいは一般の方々でも記入できる様式となっています。初回の入院・入所の際のチェックシートとして用いたり、施設間の移動の際に添付したりすることで、その人のこれまでの食べ物に関する情報を共有化できます。これにより不足した情報を補うための情報収集作業の負担も軽減できます。また、「紙媒体での利用」と「Web入力による電子媒体(PDF)での利用」を併用運用することで汎用性を高め、より広範な利用を可能としました。